■福島県土木部様導入事例
◆オンデマンドによるPDFの自動生成により、受発注者相互の負担を大幅に削減し、
図面データの一元化を達成。 平成15年度、16年度の福島県電子閲覧実証実験で採用。
導入の背景
 福島県では、2007年度導入を目標にCALS/ECの導入を進めています。CALS/ECの中でも特に重要度が高いCADデータについては、他の地方自治体も含めて納品形態や保管方法などについてさまざまな調査や実験が行われてきました。

  公共事業で用いられる図面の電子納品規格としては、長期保存性に優れるSXF規格が推奨されていますが、閲覧性やデータ容量についてはいろいろと問題点が指摘されています。福島県土木部でもこうした点を考慮して、受注者と発注者の双方に効果のあるCALS/ECを目指して、平成15年度、16年度と電子閲覧や電子納品に関する調査、実験を行ってきました。
導入の経緯
 
  SXF規格はSTEP/AP202準拠のP21形式が電子納品規格として策定されていますが、P21形式の最大の問題点はファイル容量の大きさにあります。国際規格に準拠するために、元のCADデータに比較すると数倍から数10倍もの大きさに肥大化してしまいます。
 
  今後は電子入札と合わせて、設計図書の電子閲覧が必要不可欠となりますが、インターネットを経由した電子閲覧ではP21のファイル容量は大きな問題となります。特に、大都市圏以外でいまだに広く使用されているISDN回線では負担が大きく、P21による電子閲覧はあきらめざるをえない状況でした。 また、情報漏洩の観点から見るとCADデータの直接配付は問題が多く、何らかのセキュリティ対策が求めらていました。

  こうした事を踏まえたCALS/ECに関する調査、実験の中で、マイクロアーツのオンデマンドPDF自動生成技術が評価され、実際に電子閲覧実験に採用されました。 マイクロアーツのPDF生成技術はファイル容量、セキュリティの問題をクリアし、さらに閲覧性、品質にも優れます。
 
  ですが、その最大の特徴はリアルタイムかつ全自動のPDF生成技術にあります。 福島県土木部が年間に取り扱う入札の件数は数千件にものぼりますが、通常の場合PDF化作業は発注者にとって大きな負担となります。マイクロアーツの自動生成技術は、こうした発注者側の負担を皆無にし、大幅な経費削減を可能としました。
 
実証実験の概要
 
  平成15年度は庁内閲覧を対象とした実証実験を行い、CALS/ECでのPDF利用の効果についての調査分析を行いました。マイクロアーツは、福島県土木部より調査分析業務の委託を受け、実験システムの構築と運用を行い、実験結果を分析して調査報告書を作成しました。
 
  平成16年度は、主に県内の受注者を対象とした一般公募による電子閲覧実験を行いました。

http://www.pref.fukushima.jp/kikakugijutsu/calsec/nouhin/etsurantop.html
 
 
この実験では、電子入札を導入するにあたって必要不可欠とされる設計図書のインターネット閲覧を目指して事前に意見を収集し、問題点などを明らかにすることを目的としました。

 マイクロアーツは、実験システムの構築と運用に携わり、2ヶ月間に及んだ実験業務の支援を行いました。実験の結果は下記にて公開されています。 ↓
http://www.pref.fukushima.jp/kikakugijutsu/calsec/calsec/nouhin/etsurankekka/kekka.htm
 
電子閲覧の効果
 
  アンケートの結果をみると、非ブロードバンドインターネット接続者が全体の1/4を占めています。 しかし、元のP21ファイルに比べてPDFは大幅に圧縮されていますので、閲覧速度に関してはまったく問題が発生していません。概ね数秒程度で図面が表示されています。以下が、P21とPDFの容量比較です。元のP21ファイルと比較して、圧倒的な圧縮率となっているだけでなく、他社製品で作成したPDFに比較しても相当にコンパクトです。

  これは、マイクロアーツが独自開発したダイレクト変換方式の大きな特徴であり、CADデータの内部データをまったく劣化なしに直接PDFのベクトル情報に変換しているからです。 また、CAD上のハッチデータも、そのままPDFのハッチに変換していますので、ハッチを含んだCADデータの場合には劇的効果を発揮します。 ダイレクト変換方式は図面の品質という点でも大きな特徴を持ちます。

  劣化が皆無ですので、印刷しても原寸性が保たれ、線の太さや円の形状等も正確です。CADソフトから印刷した図面とPDFを印刷した図面とでまったく違いがありません。またレイヤもそのままPDF化されるなど、マイクロアーツのPDFはプロフェッショナルレベルの品質が要求される図面分野でも充分に納得できる品質と精度を備えています。 

  公共工事の受注者は、これまで管轄の役所まで設計図書を閲覧に出向く必要があり、大きな負担となっていました。インターネットによる電子閲覧はこうした受注者の負担を大きく削減すると共に、PDF化することによって追加の機器やソフトの購入を必要としない、正に公共レベルの閲覧方式であると言えます。

図名
容量
マイクロアーツPDF
圧縮率
他社PDF
小構造物.p21
1,510KB
34KB
2.3%
166KB
一般図.p21
5,469KB
133KB
2.4%
778KB
樋管一般図.p21
5,717KB
147KB
2.6%
3,252KB

【実証実験で使用した図面データのファイル容量比較】

※他社PDFは、SXFブラウザと印刷ドライバ形式のPDF変換ソフトを使用。
 
今後の展望
 図面PDFの自動生成システムは、受注者向けの電子閲覧にとどまらず、電子納品データの保管管理や、台帳類の閲覧サービスなど広い用途での活用が可能な図面利用のインフラ的な仕組みです。
 
  今後は、CALS/ECの全体像を見据えて、広くCADデータの利活用と公共サービスでの利用などについての検証などを行っていく予定です。 なお、実験に用いたCADデータを用いたオンデマンド図面PDF自動生成技術のデモサイトにて、実験時のPDFを閲覧することが可能です。

https://microarts.jp/server-demo/index.html  ※システム自体は実験時のシステムとは異なります。